神獣の花嫁〜刻まれし罪の印〜
弐 死の遣い手

《一》民の意とは、どこにあるのか。




「……“(つい)(かた)”様は、いらっしゃらないのですか?」
「そうじゃ。わし一人で赴く」

(つじ)にある木陰。

旅人と思われる高貴な装いの女と、近くに住む村の少年───のように見える黒い“神獣”の“化身”がいた。

『破壊と死』を司どる存在である彼の“役割”は、この“下総(しもうさ)ノ国”では多岐に渡る。

物ノ怪に()かれてしまい、ヒトに害為すモノとなった存在を『葬る』こと。
人道から外れた者の『処刑』。
寒村で生まれた子を『間引く』こと。
不治の病に苦しむ者を『楽』にすること。
等々。

この国を治める者たちに都合の悪い存在を『無くす』ことが、彼の“役割(しごと)”だった。
そして、そんな彼に与えられた称号が、死の遣い手。

「───こちらが、奴らの根城とされる場所を記した地図にございます。
首領を務める者に、鬼の匂いも感じました。お気をつけくださいませ」
「分かった」
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