神獣の花嫁〜刻まれし罪の印〜
黒い神の獣は、そう自身に言い聞かす。民の意を汲むのが己の“役割”、と。
だが───そもそも民の意とは、一体どこにあるのか。
“国司”を始めとする、貴族連中のことだけを指すのではあるまい。
それが解っていながら自分は『彼ら』の思うまま、“役割”をこなしている。
(わしには、自らを動かす指針となるものがない)
人間側に立つことも、神として生きることも。
ましてや、本能のまま、獣として過ごすこともできない。
(結局わしは、何者にもなれぬ……)
憂う少年の眼は、山賊の根城とされる麓の緑を映し、細められた。
だが───そもそも民の意とは、一体どこにあるのか。
“国司”を始めとする、貴族連中のことだけを指すのではあるまい。
それが解っていながら自分は『彼ら』の思うまま、“役割”をこなしている。
(わしには、自らを動かす指針となるものがない)
人間側に立つことも、神として生きることも。
ましてや、本能のまま、獣として過ごすこともできない。
(結局わしは、何者にもなれぬ……)
憂う少年の眼は、山賊の根城とされる麓の緑を映し、細められた。