神獣の花嫁〜刻まれし罪の印〜
「よ、よろしく頼む、熊佐とやら。
湯の『調達』はお前がしてくれていると聞いた。いつも悪いな」

ひるみながらも百合子は、毎日用意されている『湯殿』の湯についてもねぎらった。

「あちゃ~、参った。
菫嬢ちゃんは律儀だなぁ……全部自分の手柄にしとけば良いのによぉ」

人のように顔を片方の前足で隠しながら変な嘆きを百合子に返すと、熊の“眷属”は用があるからと消え去ってしまった。

あとに残された一方の“眷属”が、百合子をちらりと見やり、微笑みを浮かべる。

「さて、百合様。わたくしに、何か?」

そう問いかけてきた犬耳の女は、百合子のかかえた疑問を、すでに察しているようだった。



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