神獣の花嫁〜刻まれし罪の印〜
希望の光を求めて見た赤い瞳に、百合子の反応を面白がるような色合いが浮かぶ。
「つまり───汝はこの“陽ノ元”で、黒い“花嫁”として生きることを選ぶ、ということとなる」
「分かった。それでいい」
それで、兄の命が救えるというのなら───。
百合子はそう思い、うなずいた。
「……潔いおなごよのう……」
青年の口から、そんなつぶやきがもれた。
「何?」
百合子の耳には青年の言葉はよく聞き取れず、眉をひそめたが返答はなかった。
代わりに、赤い瞳の眼光が百合子を捕らえた。凛とした声で放たれる、言霊の誓約と共に。
「汝の過去である『工藤小百合』という存在を、いまこの瞬間、我ヒノヤギハヤヲの名において、抹消することをここに誓おう。
汝はこれより先、ただの『百合子』として“下総ノ国”の黒い“神獣”の“花嫁”となるがよい」
コツン、と。
ふたたび床を杖が突くような音を最後に、百合子の意識は遠のいていった……。
「つまり───汝はこの“陽ノ元”で、黒い“花嫁”として生きることを選ぶ、ということとなる」
「分かった。それでいい」
それで、兄の命が救えるというのなら───。
百合子はそう思い、うなずいた。
「……潔いおなごよのう……」
青年の口から、そんなつぶやきがもれた。
「何?」
百合子の耳には青年の言葉はよく聞き取れず、眉をひそめたが返答はなかった。
代わりに、赤い瞳の眼光が百合子を捕らえた。凛とした声で放たれる、言霊の誓約と共に。
「汝の過去である『工藤小百合』という存在を、いまこの瞬間、我ヒノヤギハヤヲの名において、抹消することをここに誓おう。
汝はこれより先、ただの『百合子』として“下総ノ国”の黒い“神獣”の“花嫁”となるがよい」
コツン、と。
ふたたび床を杖が突くような音を最後に、百合子の意識は遠のいていった……。