神獣の花嫁〜刻まれし罪の印〜
「コク。私を『本当の嫁』にするのなら、この板の間はきつい。屋敷に帰ってからにしてくれ」
「…………へ?」

ぽかん、とした顔を向けられた直後。
ものすごい素早さで、コクコが百合子の身体の下から抜け出した。

「っ、ままま待て! わしは、そういうつもりではなく……」
「なんだと? 私に色気がないから無理だと言う気か?
しかし、男たるもの女の裸を見れば、少しはその気に───」
「いやいやいや、そうではなくてだなっ、百合! 待て! 頼むから、ここでは脱がんでくれーっ……」

コクコの情けないほどの懇願が、百合子に聞き入れられたかは、黒い“神獣”とその“花嫁”のみが、知ることである。



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