神獣の花嫁〜刻まれし罪の印〜
「……兄上……!」
困惑と、憧憬と。
入り交じる兄への感情に、小百合は力なく首を左右に振る。
何が、彼を、この狂気に走らせたのか。
「どうして逃げるんだい?」
理解できないといわんばかりに、本当に不思議そうに見返してくる、薄茶色の瞳。
───その優秀さのあまり、分家筋から養子として引き取られた、血のつながらない兄。
「もう何も心配しなくていいんだ。
ずっと一緒にいよう、小百合」
朱に染まった顔と手が、近づいてくる。
おぞましいと、その時ようやく思考と感情が一致して。
小百合は思いきり、兄を突き飛ばした。
───直後。
白い軍服に、新たな深紅の染みが、広がった。
困惑と、憧憬と。
入り交じる兄への感情に、小百合は力なく首を左右に振る。
何が、彼を、この狂気に走らせたのか。
「どうして逃げるんだい?」
理解できないといわんばかりに、本当に不思議そうに見返してくる、薄茶色の瞳。
───その優秀さのあまり、分家筋から養子として引き取られた、血のつながらない兄。
「もう何も心配しなくていいんだ。
ずっと一緒にいよう、小百合」
朱に染まった顔と手が、近づいてくる。
おぞましいと、その時ようやく思考と感情が一致して。
小百合は思いきり、兄を突き飛ばした。
───直後。
白い軍服に、新たな深紅の染みが、広がった。