ホテル御曹司は虐げられ令嬢に生涯の愛を誓う

旅行に行くと話していたけれど、いつ帰ってくるのか聞いていない。

動けない分、ここで助けが来るまで大声で叫べばあっという間に体力がなくなる。

時間だけがゆっくりと過ぎて、ムシムシと暑くて喉が渇く。汗で衣服が体に張りつく。

ジッと天井を見続けて一日が終わるのを待つことしかできない。

「両腕が攣りそう……」

独り言を話してもすぐに静まり返る。

ボーッと起きてるときも寝ているときも思うことがある。

それは、お母様のところへ行ったら今の暮らしから解放されるんじゃないかって。

でもそれは生きるのを諦めて自ら命を絶つことを意味する。

頭の片隅にはこのまま生きたい自分と、このまま楽になりたい私がいること。

「こんなことを思っていたらお母様に怒られちゃうわね……」

そう言い私は意識が遠くなるのを感じた。
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