ホテル御曹司は虐げられ令嬢に生涯の愛を誓う
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私は目を覚ました。
そして知っている天井じゃない。ここはどこだろう。なんだか外が騒がしい。
「あっーー」
どうしよう、声がうまく出ない。重い身体で起きあがると見覚えのある布団。
そして私の両手首には何重にも包帯が巻かれてある。部屋を見渡すと思い出した。
「ここ、杏華旅館……?」
すると部屋の襖が開いた。中へ入ってきたのはあの日から会いたかった人。
「沙凪お嬢様ッ!」
三隅は涙を流しながら私の名前を呼び抱きしめる。
わずかな力ではあるけれど私も三隅を抱きしめた。
「沙凪お嬢様、迎えに行くのが遅くなってすみませんでした」
私は声がうまく出せなくて必死に首を横にふる。
「ここは安全です。ゆっくりでいいので体調を回復させましょう」
この言葉を聞いて私は頷く。