ホテル御曹司は虐げられ令嬢に生涯の愛を誓う
私ね、翔くんの手が大好きなんだよ。優しく包み込んでくれる大きな手。
私を呼んでくれる声も心が落ち着くの。
「沙凪、どうした?」
『何にもないけど、まだ翔くんと話したいことがたくさんあるのに眠くなってきちゃった』
「このまま寝てもいいよ。沙凪が寝るまでここにいるから」
私は布団の上で横になり、翔くんの手を握って目を閉じるとそのまま眠りに落ちていった。
杏華旅館から高城ホテルが連携している病院へ二週間の入院をしていた。
毎日三食の食事と適度な運動をしながら、少しずつ体調が回復した私は普通に声も出せるようになって、いつもの生活に問題はないと医師に言われて無事に退院ができた。
私の荷物は家に三人がいない時間帯を見て、三隅が私の荷物を少しずつあの家から持ち出してくれた。
「沙凪、行こうか」
「はい」
私たちは病院を後にして翔くんの運転でどこかへ向かっている。助手席に座っている私はハンドルを操縦している翔くんの横顔を眺めていた。
「沙凪、なにジロジロと見てんの?」
「あっ、申し訳ございません!」
「沙凪はもう使用人じゃないんだから俺にかしこまらなくていい」
翔くんにそう言われてもなかなか使用人だった頃の感覚が抜けないのだ。