ホテル御曹司は虐げられ令嬢に生涯の愛を誓う

ただ、風が吹く音、鳥の鳴き声と自然の音を聞きながらも私は彼の手を繋いでいると心がスーッと落ち着く。

私たちは庭を何周散歩したのだろう……。

お母様のいる部屋へと戻ろうとした矢先にお母様の声が聞こえた。

「沙凪、翔くん!」

声がしたほうを振り向くとお母様と翔くんのお父様がいた。

「戻りましょうか、沙凪お嬢様」

「はい」

お母様と翔くんのお父様のところへ戻るとそのまま別れを告げた。

「翔くんと何か話したの?」

「いいえ、何も話してない。ずっと手を繋いで散歩しただけよ」

私の話にお母様は優しく笑う。

私は月日が経つ頃に知ることになる。お母様の家は国内で有名な杏華(きょうか)旅館の御令嬢だったってことを。


そして数年後ーー。


私の生活が不幸せのどん底へと向かうことを今の沙凪は知らない。
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