ホテル御曹司は虐げられ令嬢に生涯の愛を誓う
不幸せ
***
七月の中旬ーー。
私、華園沙凪(はなぞの さな)は部屋にある鏡の前で胸下あたりまである黒髪を櫛で梳いていた。
女性の使用人である三隅(みすみ)が血相を変えて慌ててノックをせず私の部屋の扉を開けた。
「失礼します、沙凪お嬢様。突然部屋の扉を開けたことをお許しください。至急、病院へ向かいましょう」
私は三隅の口調に違和感を感じて落ち着いて問いかける。
「何かあったの?」
「あの、奥様がーーーー」
彼女から言われた言葉に私の胸の鼓動が早くなるのを感じた。
それから私は男性の使用人の桝田(ますだ)も連れて急いで電話が来た病院へと向かう。
病院へ着いてお母様と会った場所は薄暗く冷たい部屋。扉には霊安室と記載されている。
何故かお母様の顔と身体に白い布が掛けられていた。
桝田がお母様の顔の布をとる。
「お、お母様、起きて……」
私の声にお母様は寝てるようでピクリとも動かない。