ホテル御曹司は虐げられ令嬢に生涯の愛を誓う
すると翔くんの表情が私の知ってる優しい顔に戻った。
「そしてあなた方は沙凪を動けないようにベッドの上に縛り上げたまま旅行へ行きましたよね。彼女は暑い中水分も食事も取れない日々を過ごして……あと一日、助けるのが遅れてら……どうして名家の母を持つ娘が使用人にならないといけないんだ」
「名家ってなんのことよ」
さっきまで黙っていた継母と突如、口をひらいた。
「華園家の家は森垣家が建てた家だ」
「森垣家って誰? 宗治さんからそんなこと聞いてないわ」
高城ホテルと同盟を結んでいる杏華旅館は森垣家が経営している。そして、沙凪の母親は杏華旅館のご息女。華園財閥より大きな利益も出している。
「華園宗治はそのことを知っててあなたと関係を持ったのでは?」
「じゃ、今まで使ってたお金は宗治さんのではない……」
「本当なら今も海外に行ってたんじゃないですか。だけど突然お金が動かせなくなったからしたなく日本に帰ってきた」
すると、見透かされたかのように継母は声を震わせていた。
「どうして、知っているのよ」
「華園七海さんの遺言書が見つかって、内容は娘の沙凪に土地と建物、遺言者名義の預貯金を取得させる。と記載されていたのを裁判所で手続きをした」
「そ、そんなこと宗治さんは知らないわ!」
「ここにちゃんと検認証明書があります」
「そんなの、認めないわ!」
会場の扉が開いて入ってきたのは華園宗治だった。