ホテル御曹司は虐げられ令嬢に生涯の愛を誓う

「お母様、お母様!」

私の肩を抱き寄せて三隅が声を殺して涙を流している。

「いや、私をひとりにしないで、お母様……」

少し落ち着いた私はひとり霊安室を出てスマートフォンでお父様に電話をする。

お父様は出張で他県にいる。
何回目かのコールで電話に出たお父様に話をした。

「もしもし、お父様。お母様が事故にあって……」

私は涙をこらえることが出来なくてお電話越しで状況を察した。

「そうか、父さんは仕事ですぐには戻れそうにないから」

電話越しからは何処か楽しそうな声がきこえる。

『パパー!』

「電話中だからあっちで待ってなさい」

私の耳にはっきりと聞こえた。 お父様のことを『パパ』って言った女の子。

今はそんなことどうでもいい。 私はお父様との電話を切って床に座り込んで声を上げて泣いた。

その後のことは何も覚えていない。どうやって帰ってきたのかも。

そして、お母様のことは全て使用人と親族の香華旅館の皆さんが手続きなどをしてくれた。
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