ホテル御曹司は虐げられ令嬢に生涯の愛を誓う
覚えているのは泣いてる私の頬に手を当てて『大丈夫』と優しく抱きしめてくれた翔くん。
私はなぜか翔くんの手が大好きで心が落ち着くまで寄り添ってくれた。
そして、お母様の全てが終えてから三日後にお父様が出張から帰ってきたのだ。
しかも、知らない女性と子供を連れて。
「沙凪、今日から桐子(きりこ)と夏果(なつか)とこの家に住むことにした」
「お父様、どういう意味ですか?」
「父さん、桐子と再婚することにしたんだ」
お父様の言葉に私の頭は真っ白になった。
この家にはお母様との大切な思い出もある。それなのに見ず知らずの人を住まわせるだなんて有り得ない。
私は振り絞った声でお父様に反抗をした。
「お父様、私は認めません!お母様との大切な家に……しかもお母様が居るのに再婚だなんて」
「あいつは死んだんだ。再婚することはいいだろう」
お母様のことを『あいつ』呼ばわりしたお父様の言葉に私は涙が止まらない。
「ねぇ、あなた。この子をこの家の使用人にしたらどうかしら?」
「私もこの人を使用人に賛成!」
「桐子と夏果がそう言うならそうするか」
お父様はあっさりと使用人扱いを承諾した。