ホテル御曹司は虐げられ令嬢に生涯の愛を誓う
程なくして病院に着き、私はそのまま分娩台の上にいた。股の間を見ると足元には亜実さんがいる。
「翔くん、は、まだ、きて、ない……?」
「沙凪、俺はここにいる」
ずっと聞きたかった声で私の手を握る彼。私も彼の手を強くつかむ。
「沙凪、がんばれっ!」
「あっ、うーーーーん!」
亜実さんの声掛けで何回かいきんだ瞬間、私は全身から力が抜け落ちた。
「元気な男の子ですよ!」
「ようやく、会えた……」
私たちのもとに三千二百グラムの元気な男児が生誕した。
名前は拓人(たくと)。
意味は至難を乗り越えて自分自身の道を切りひらく人になって欲しいと思って名を決めた。
「仕事は大丈夫なの?メールには『向かう』ってしかきてなかったけど」
「いや、俺は『今から向かう』って送ったけど?」
私は翔くんからきたメールを読み返した。