激甘バーテンダーは、昼の顔を見せない。
「東郷さんって…何者ですか…」
普通の人では無い。
直感で、そう感じた。
フッと小さく笑い、優しく私の手を取る東郷さん。
「…俺はただの、新米バーテンダーです」
そう言って私の手を口元に近づけ、軽く手にキスをした。
「西野さん、さっきの話ですけど。キスをしたのは、嫌ではありませんでした。もし西野さんにもその気があるのでしたら、お付き合いをしませんか。世には”お互い何も知らない”状況から始まる恋愛もありますから」
東郷さんは手を握ったまま、優しい眼差しでこちらを見ている。
傷心中の私の心に響く東郷さんの言葉。
……やっぱり単純な、どうしようも無い私。
そんな私は、彼のその優しさに触れ…。
「…お願いします」
東郷さんと、新たな道をゆく決意をした。