激甘バーテンダーは、昼の顔を見せない。






幸福感に包まれながら眠る中。

ふと、懐かしい夢を見た。



【西野聖華】として過ごした、高校3年生の時の夏。

進路相談で当時の担任と2人で話した時のことだ。


「失礼します」
「どうぞ」


相談室に入って席に着いた途端、その担任から発せられた言葉。


「西野さん。…前から思っていたんですけど。君…【西條綾乃】ですよね」
「………え?」


誰も知らない、私のその秘密。
この学校で一言も発したことのない、その名前。

それが担任の口から出て来たことに酷く驚いた。


「な… ◾︎◾︎先生…。意味が分かりませんよ。私は【西野聖華】です。一体、何のことですか…」
「…いや、君が入学してきた時からずっと気になっていたんです。そして今年度、担任をして確信しました。君、西條産業開発の社長令嬢、【西條綾乃】です」


…やめて。
その名前を、ここで出さないで…。


積み上げて来た【西野聖華】が壊れるような気がした。


壊したくない。
これ以上、◾︎◾︎先生に踏み込んできて欲しくなくて…。


「し、進路の話をしないなら…教室に戻ります」


そう言って、相談室から出て行ったところで…



現実に戻された……。






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