激甘バーテンダーは、昼の顔を見せない。






「…あれ、東郷さん…」



時刻は午前7時50分。
目覚めると…そこに東郷さんは居なかった。


机の上に置かれている書き置きとペットボトルに入った水。


《おはようございます。申し訳ございませんが、急用が入りましたのでお先に失礼致します。精算はさせて頂いております。どうか、お気を付けてお帰り下さい》


「…急用……」


そう言えば、東郷さんと連絡先の交換をするのを忘れていた。



深夜に脱ぎ散らかした服は、綺麗に畳んで置いてある。

そんな服を身に着けて、ホテルを後にした。




今までの男性で経験したことのない、激しくも優しい愛のある行為。


東郷さんって遊び慣れているのかな…なんてよぎるが、仮に遊び人ですぐに捨てられたとしても全然構わない、という思いが湧き上がってくる。


婚約を破棄する以上に辛いことなんて、もう二度と現れない気がするから…。



東郷さんが「愛する」と言ってくれる限りは、彼と同じ道を歩みたい。
心の底から、そう思った。





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