激甘バーテンダーは、昼の顔を見せない。
部屋に入るなり、東郷さんと唇を重ねる。
身を捩らせ、倒れこむようにベッドに転がった。
「【西條綾乃】さんと体を重ねるのは、初めてですね」
「…すみません」
「謝ることではありません…」
もう一度唇を重ね、東郷さんは手探りで服の中に手を入れる。
身体中を撫で回して両胸で見つけたそれを軽く弾く。
私も手を動かし…東郷さんの首元で締められているネクタイに手を掛けた。
スルッと解けるネクタイ。
それにまた色気を感じて…身体が疼く。
いつになく緊張するその行為。
私も、東郷さんも…何故か、手が震えていた。
「…綾乃さん、愛おしいです」
「え?」
「愛おしくて、大切にしたくて…すみません、手が…震えます」
言葉通りの震える手で、私の頬を触れる東郷さん。
私を見つめるその瞳は少しだけ潤んでいた。
「【西野聖華】さんを抱くのと、【西條綾乃】さんを抱くのでは…気持ちが全然違うことに…今気付きました」
そんな東郷さんの緊張感が伝わるからだったのだろうか。
私も…手が震える。
「……」
東郷さんの言葉に、返答する言葉が思いつかなくて。
私は東郷さんの首に腕を回して…力強く抱き締めた。
激しく揺れるベッド。
大人2人を支えるそのベッドは、何度も軋んだ音を出す。
全身を丁寧に愛撫され、心も身体も東郷さんで満たされていく。
そんな激しく甘く優しい時間に酔い、今日もまた目が冴えていた。
「…綾乃さん、避妊具取ってきます…」
「東郷さん…良いです」
「でも…」
逃げようとする東郷さんの腕を掴んで引っ張る。
幸福感に満たされている私は、思わず恥ずかしい一言を零した。
「…和孝さん、私も貴方を愛しています。…だから私、貴方となら…どうなっても良い…」
自分からそう言ったのに、恥ずかしさで顔を隠す。
けれど、その言葉に嘘は無い。
心の底から出てきた、私の本音だ。
東郷さんは少し驚いた顔をした後、ゆっくりと微笑んで優しくキスをした。
唇を離し、目を合わせる東郷さん。
その目から一筋の涙が零れた。
「綾乃さん、愛しています。結婚、しましょう…」
突然のプロポーズに驚いていると、東郷さんはそっと入ってくる。
汗と涙でぐちゃぐちゃになった私たち。
言葉にならない感情で溢れ苦しい私はまた、東郷さんの全てを受け入れた。