友達のままで
 新年会の翌日、スマホの受話口からは、茉優の甲高い声が漏れていた。

「やっぱり! あの感じ、絶対そうだと思った! おめでとう!!」

 さすが女の勘は鋭い。親友ともなれば尚更だ、と思っていたが、実は互いが思いを寄せていることを聞いて知っていた茉優と航大が、昴の尻を叩いていたと後から知った。聞けば、夏頃からだというから驚いた。痺れを切らした茉優が「睦美に彼氏が出来そうだ」と事前に昴に吹き込んでいたらしく、新年会での昴の落ち着かない様子は、不安や焦りのせいだったのかもしれない。
 昴と共通の友達がいることは、心強かった。それからは、茉優達と同じように、昴と恋人同士で集まりに参加するようになった。
 相変わらず昴は誰にでも優しかったが、昴の恋人という安心感で、睦美の嫉妬心は消えていった。

 春に茉優と航大が同棲を始めたタイミングで、睦美の職場異動があり、勤務先が昴のマンションのすぐそばになったのをきっかけに、睦美と昴も同棲することになった。
 昴から一緒に住もうと言われた時は、天にも昇る気持ちで、これから始まる二人の生活に心が躍った。
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