友達のままで
 付き合い始めた頃から昴の態度の変化には何となく気付いていたが、それが顕著に現れるようになっていた。

「睦美、飲み物買ってきて! 皆の分な」

 昴と初めて会った公園で何度目かのバーベキューをしていた時、昴が言った。

「え? あ……うん、わかった」

 皆の分と言われて、睦美は一瞬躊躇った。
 一人で買い出しに行くには無理があった。あの頃六人から始まったバーベキューは、回を追うごとに人数が増えて、総勢十五人になっていたからだ。
 紙皿に入っていた肉を口に入れると、睦美は財布を手にコンビニに向かった。昴らの楽しそうな笑い声はかなり遠くまで聞こえていた。
 コンビニの少し手前で呼び止められて振り返ると、メンバーの中の一人の男性だった。

「一人だと一回では無理だろ? 手伝うよ」
「ありがとう!!」

 初対面で名前までは覚えていなかったが、彼のおかげでコンビニを往復せずに済んで助かった。レジ袋を二つずつ提げて戻ると、皆から感謝されて気分は良かったが、昴だけは複雑な表情を浮かべていた。
 睦美は訳がわからずもやもやしながら、あの頃は優しかったのに、などと考えた。
 一人では無理だと気付かなかったのだろうか。それとも、席を外せない何かがあったのだろうか。いや、そんなはずはない。友達との会話に夢中だっただけだろう。
 睦美はふと、あの日の昴の言葉を思い出した。
 やはり、友達が一番ということだろうか。
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