友達のままで
 ベッドに入ってもなかなか眠れず、睦美は毛布にくるまったまま再びソファーに腰掛けてぼんやりとしていた。

 スマホが一瞬光ったかと思うと、欲を出してどつぼにはまった自分を嘲笑うかのように、軽快な着信音が鳴り響いた。
 画面に表示された『茉優』の文字に睦美はがっかりしていた。

「はい」
「睦美? 今ね、航大から電話があって、昴と一緒に居酒屋にいるって」
「え?」
「帰るとこがないって言ってるみたいたけど、何かあったの?」
「うーん……私がちょっと酷いこと言っちゃって」
「喧嘩?」
「そうじゃなくて……。最近昴の態度が、何て言うか……」
「ああ、やっぱり――」
「え?」
「確かに、最近の昴の態度は目に余るもんがあったよ。前から航大とも話してたの」

 周囲が気付く程に酷かったということだろうか。もしかすると、自分は皆から可哀想な彼女のレッテルを貼られていたのかもしれない。

「でもね、うちにいる時の昴はそんなことなくて」

 言い訳をしているようで、何だか自分が惨めに思えてきた。

「何か、よくわかんなくなっちゃって……」

 感傷的になって、不意に涙が溢れた。

「泣いてたって仕方ないでしょ。二人でちゃんと話し合わないとどうにもなんないんだからね」
「ううっ……わかってる」
「あんなに交友関係の広い昴が、夜にひとり公園のベンチでしょぼくれてたっていうんだから」
「えっ? 公園にいたの?」
「とにかく、今からそっちに送ってもらうから、ちゃんと話し合いなよ!」
「……わかった」
< 8 / 9 >

この作品をシェア

pagetop