『悪役令嬢』は始めません!
順調という名の罠もある
あっという間に、来週は卒業パーティーという休日。私はセレナと二人、アクセサリーショップへと来ていた。
というのも三日前、五回目のレンさんとのランチデートにて閃いてしまったからである。ちなみにランチデートは三回目から、マイ箸ならぬマイフォーク&スプーンを持参で行っている。
四日前、我が家に卒業パーティー用に仕立てていたドレスが届いた。
当時、私とスレイン王子は年内に結婚する予定だった。よって、卒業パーティーでは彼の髪や瞳の色を取り入れたドレスを着用することになっていた。
そんなドレス、今後着る機会など一生ない。どころか、持っているだけで「スレイン王子に未練がある」という噂が立ちかねない。
お針子さんには大変申し訳ないが、メイド長に言って即時分解してもらった。そしてその布はメイドさんたちへ配布してもらった。上質な布なので、おそらく喜んでもらえたはずだ。どうか安らかに成仏して欲しい。
そういったわけで、卒業パーティーで着用するドレスは改めて選ぶことになった。
今回のパートナーは父ということで、パートナーに色を合わせる必要がない。どんな色でも自由に選べる。
――と、来ればレンさんの色を身に着けるしかない。私はレンさんの髪を彷彿とさせる濡れ羽色のドレスを、新たな卒業パーティー用として選んだ。折良く、供養したドレスと一緒に仕立てていたもので、まだ一度もお披露目していない。これしかないとビビッと来た。
(ふっふっふっ、半年前の私グッジョブ!)
しかし、最初はメイド長に反対されたのだ。若い娘さんが着るようなドレスではないと。
確かにそれはわかる。だから私もこのドレスは、卒業後しばらく経ってからの夜会用と考えていた。
大きく肩と背中が開いた、マーメイドドレス。その裾には金の薔薇が刺繍されている。ドレスの上から羽織る黒のオーガンジーストールには、黒い薔薇。セクシー路線まっしぐらなそのデザインは、女盛りの妖艶美女にしか着こなせないだろう。
だが、そこは悪役令嬢。着てみたらあら不思議。めっちゃ似合う。これにはメイド長も折れてくれた。イエス! 悪役令嬢!
後は、茶色の宝石を使ったアクセサリーを身に着ければ完璧だ。……ということで、今日のアクセサリーショップ訪問である。セレナの方は丁度新作を見たかったと、私の誘いに快く応じてくれた。
それから数時間を費やし、私もセレナも納得の行く一品に巡り会えた。
私の方は、濡れ羽色のドレスにちなんで鳥の羽を象った金細工にブラウンダイヤモンドがあしらわれたものにした。
「それにしてもシアったら。まるでもう別の男性と結婚した後のパーティーのようよ」
「コンセプトは正にそれなの。気付くとはさすがね、セレナ」
「まぁ」
店内の長椅子で一息つく。そこで私は卒業パーティーで着る予定のドレスをセレナに話した。
色素の薄いスレイン王子とイメージが真逆な、濃い色のドレスと宝石を選んだ私。レンさんのことを知らないセレナは、単なる当て付けとしか思わなかったはずだ。それを新たな結婚と表したセレナは、本当にできた友人だと思う。
というのも三日前、五回目のレンさんとのランチデートにて閃いてしまったからである。ちなみにランチデートは三回目から、マイ箸ならぬマイフォーク&スプーンを持参で行っている。
四日前、我が家に卒業パーティー用に仕立てていたドレスが届いた。
当時、私とスレイン王子は年内に結婚する予定だった。よって、卒業パーティーでは彼の髪や瞳の色を取り入れたドレスを着用することになっていた。
そんなドレス、今後着る機会など一生ない。どころか、持っているだけで「スレイン王子に未練がある」という噂が立ちかねない。
お針子さんには大変申し訳ないが、メイド長に言って即時分解してもらった。そしてその布はメイドさんたちへ配布してもらった。上質な布なので、おそらく喜んでもらえたはずだ。どうか安らかに成仏して欲しい。
そういったわけで、卒業パーティーで着用するドレスは改めて選ぶことになった。
今回のパートナーは父ということで、パートナーに色を合わせる必要がない。どんな色でも自由に選べる。
――と、来ればレンさんの色を身に着けるしかない。私はレンさんの髪を彷彿とさせる濡れ羽色のドレスを、新たな卒業パーティー用として選んだ。折良く、供養したドレスと一緒に仕立てていたもので、まだ一度もお披露目していない。これしかないとビビッと来た。
(ふっふっふっ、半年前の私グッジョブ!)
しかし、最初はメイド長に反対されたのだ。若い娘さんが着るようなドレスではないと。
確かにそれはわかる。だから私もこのドレスは、卒業後しばらく経ってからの夜会用と考えていた。
大きく肩と背中が開いた、マーメイドドレス。その裾には金の薔薇が刺繍されている。ドレスの上から羽織る黒のオーガンジーストールには、黒い薔薇。セクシー路線まっしぐらなそのデザインは、女盛りの妖艶美女にしか着こなせないだろう。
だが、そこは悪役令嬢。着てみたらあら不思議。めっちゃ似合う。これにはメイド長も折れてくれた。イエス! 悪役令嬢!
後は、茶色の宝石を使ったアクセサリーを身に着ければ完璧だ。……ということで、今日のアクセサリーショップ訪問である。セレナの方は丁度新作を見たかったと、私の誘いに快く応じてくれた。
それから数時間を費やし、私もセレナも納得の行く一品に巡り会えた。
私の方は、濡れ羽色のドレスにちなんで鳥の羽を象った金細工にブラウンダイヤモンドがあしらわれたものにした。
「それにしてもシアったら。まるでもう別の男性と結婚した後のパーティーのようよ」
「コンセプトは正にそれなの。気付くとはさすがね、セレナ」
「まぁ」
店内の長椅子で一息つく。そこで私は卒業パーティーで着る予定のドレスをセレナに話した。
色素の薄いスレイン王子とイメージが真逆な、濃い色のドレスと宝石を選んだ私。レンさんのことを知らないセレナは、単なる当て付けとしか思わなかったはずだ。それを新たな結婚と表したセレナは、本当にできた友人だと思う。