エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~


 ふたりの結婚報告から数日後。

 美月は自身の持ち場であるコンシェルジュデスクにいた。フロントの横、一階ロビーの奥に位置していて、お客さまや従業員たちの様子を見守ることができる。お客さまの様々な要望に応え、最高の笑顔を引き出すこの仕事は子どもの頃からの憧れだった。

 帝都グランデホテルは東京、お台場のベイエリアにドンとそびえ立つラグジュアリーホテルだ。二十五階建てで、客室数は三百。

 クラシカルな雰囲気のエントランスから足を踏み入れれば、青い絨毯の敷かれた大階段とアンティークな振り子の柱時計が出迎えてくれる。この大階段はシンデレラ気分を味わえると、ウェディングフォトスポットとしても人気がある。

 メインダイニングを含めて高級レストランが四軒。ブライダル施設やバンケットルームはもちろんのこと、屋内プールとフィットネススタジオも完備。国内資本としては業界最大手の『帝都ホテルグループ』の顔となるのが、この帝都グランドホテルだ。

 コンシェルジュの制服は、白のカットソーに艶のあるブラックのパンツスーツ。首にワインレッドのスカーフを巻いて、長い黒髪はきっちりまとめたシニヨンスタイルに。

 憧れていたこの制服を着られるようになってちょうど一年。次の目標だったコンシェルジュチーフの席も、上司から内々に打診をされていてキャリアは順調そのもの。

(だから、失恋くらいなんてことない。私は大丈夫。仕事に邁進するのみよ!)
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