エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 ふいにこちらを振り返った晴馬に、美月はビクリとしてしまう。

「そんなに警戒しなくても、なにもしないから。今夜はもうここにいろ。美月も、色々気疲れしただろう?」
「あ、えっと、じゃあそうさせてもらおうかな」

 本当は、晴馬と同じ部屋でぐっすり眠れる気なんてしないけれど。

(でもここで意固地になって部屋に戻ると言ったら、意識してるのバレバレな気がするし)

「そうしろ」

(もしかしたら、この夜は神さまがくれたチャンスなのかも)

 晴馬との間で、母の、月子の話題が出るたびに話を切り出すべきか迷ってはいた。けれど、なにから、どう伝えたらいいのかわからなくて……言えなかった。

 すぐそこにいる晴馬は一応目をつむっているけれど、まだ起きていることは察せられた。

「晴馬、少し話してもいいかな?」

 彼の瞳がゆっくりと美月をとらえる。

「うん。なに?」
「二十年前の、昔話。お母さんが亡くなった火事の日のこと」

 晴馬は黙って、美月の話の続きを待ってくれている。

「私を止めてくれて、助けてくれてありがとう。それから、ひどいことを言って本当にごめんなさい」

 長年心につかえていた言葉をやっと伝えることができて、美月はほぅと息を吐く。

「晴馬と再会できてよかった。ずっと謝りたいと思ってたの」
「謝る必要なんかないよ。あの夜の美月の、正直な思いだったんだから」

 晴馬の優しさが胸に染みた。
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