エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
「俺も、ずっと後悔してた。美月がカナダに行く前に、伝えたいことがあったのに……どうしても勇気が出なくて声をかけられなかった」
「え? 晴馬は私とは話したくないと思っていたでしょう? だって――」

 美月が出した手紙のことを彼に尋ねてみた。すると晴馬は心底驚いた顔をする。

「手紙なんて受け取っていないぞ」
「嘘! たしかに晴馬の机に入れたと思うけど……もしかして、私ほかの人の机と間違えて?」

 そんなことないと思いたいけれど、晴馬が受け取っていないと言うならその可能性も否定はできない。

「いや、俺が見落としたのかも。あの頃、教科書とかプリントとかグチャグチャに入れてたし」

 ふたりは顔を見合わせる。今となっては、どちらの説が正しいのかを確かめるすべもない。

「あの手紙、どこに行っちゃったんだろう」
「ほんとにな」

 だが、晴馬が美月を無視したわけではなかったことがわかった。

「なんだ、そうだったんだぁ。私、晴馬に嫌われたと思って……だからカナダから手紙を出すのも躊躇しちゃって」
「俺も。美月はもう、俺の顔なんか見たくないだろうと思ってたから」

 どちらからともなく、クスクスと笑い出す。

「馬鹿みたいだね、私たち」
「あぁ」

 嫌われていなかった。その事実が美月の心を弾ませた。心なしか、晴馬の表情も嬉しそうに見えた。

「俺さぁ、子どもの頃すごく意地っ張りだっただろ」
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