エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
決意をあらたにして前を向けば、ちょうどスーツ姿の男性客がこちらにやってくるところだった。
「なにかお困りでしょうか?」
美月はにこやかな笑みを見せる。
「すみません。海外から来た取引先の方と食事をしたいのですが……え~と、なんて言うのでしたっけ? ハヤ、ハレ……なんだっけな」
パッと思い浮かばないようで、彼は首をひねっている。
「ハラルフードのことでしょうか?」
「あぁ! そう、それ。この辺りにしっかり対応してくれる店はあるかな?」
ハラルフードとは、イスラム教徒が食べてもよいとされている食事のこと。近年では日本でも需要が増えていて『ハラルフード対応可』をかかげる店はたくさんある。
「お食事会は何名さまでのご予定でしょう?」
「あ、人数はそんなに多くないんだ。五人の予定でね」
「かしこまりました。それでしたら……」
美月はデスクの上に置いてある館内の案内資料を指さしながら、彼に説明する。
「当ホテル内でもメインダイニング、それからこちらの『割烹・鷹』が対応可能でございます」
「いいねぇ、うまそうだ。けど、先方は『日本の居酒屋に行ってみたい』とのことでね。もう少しカジュアルな雰囲気の店はある?」
「もちろんです。ホテルから徒歩圏内でしたら、こちらのお店などがハラル対応可となっております」
ハラルフードの質問はとても多いので、お客さまにすぐにお渡しできるようMAPつきのパンフレットを用意してある。美月は笑顔でそれを差し出した。
「私のほうで予約を取ることもできますので、その際にはまたお申しつけくださいませ」