エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 マンションに到着したのは夜八時過ぎだった。背中が痛むのだろう。晴馬はおそる、おそるといった感じでソファに腰かける。それから、ぼんやりと立ったままでいた美月にも座るよう声をかけた。

「うん、ありがとう」

 彼の隣にちょこんと座る。

「美月も仕事のあとで疲れているのに、病院に呼びつけたりして悪かったな」

 ショックで口数の減っていた美月を気遣うように彼が言った。美月はブンブンと首を横に振る。

「ううん。私のことより、晴馬はどう? 火傷は痛まない?」
「多少痛むけど、平気だよ。この程度の怪我は覚悟のうえだから」

 レスキュー隊員としての誇りはかっこいいけれど、少し複雑な気持ちになる。

「でも、自分のことも大切にして。伊沢さんから電話をもらったとき、心臓が止まるかと思ったんだから」

 あの瞬間、母の死を思い出してしまった。晴馬になにかあったらどうしよう……と怖くてたまらなくなった。偽りの夫婦だったはずなのに、自分のなかで彼の存在がこんなにも大きくなっていたことに驚く。

「無事で……本当によかった」

 かすかに震えていた美月の頭を、晴馬の大きな手が優しく撫でてくれる。

「火災現場の話、美月はあまり聞きたくないかもしれないけど」

 ためらいがちな晴馬の言葉を遮って、美月は言う。

「ううん、教えて。なにも知らないほうが怖いから」
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