エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 美月はくるりと踵を返し、彼女より先に持ち場に戻る。
 先輩として当然すべき注意だと思ったし、『コンシェルジュデスクを頼って』という言葉は由奈の身体とお客さま、どちらのことも考えた提案のつもりだった。

(それがどうしてこんな事態になっちゃうの?)

 翌日、出勤した美月を出迎えたのは同僚たちの冷ややかな眼差しだった。

「仕方ないんですぅ。羽山さんが怒るのは当然です。でも、おなかの子に罪はないので……この子だけは」
「そうよ~。どんな理由があったとしても妊婦を突き飛ばそうとするのは、さすがにないわぁ」

 ロッカールームでグズグズと泣きじゃくる由奈を慰めるのは、ベテランのパートさんたち。

(私が怒った? 突き飛ばすって……なんの話?)

 由奈に話を聞こうと思っても、彼女はパートさんたちの背中に隠れてしまって直接は話せない。諦めてロッカールームを出てバックヤードの廊下を歩けば、そこでも針のむしろ。

「一番悪いのは、只野じゃないか? 職場内で三角関係はなぁ」
「けど、先に浮気したのは羽山さんのほうって話だぞ。只野は前々から結婚も考えてるって言ってたし、傷ついたんだと思うよ」

 コソコソ噂話をしているのは、男性の先輩たち。

 午前の仕事を終える頃には美月にも事態が見えてきた。
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