エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 男らしい低い声は寝起きのせいか少しかすれていて、いやに色っぽい。彼はくあ~っとあくびをひとつして、起きあがる。白いTシャツとネイビーのジョガーパンツ、おそらくパジャマだろうけれど……姿勢がよく、しなやかな筋肉のついた彼はラフな格好もさまになっている。このままファッション誌の表紙を飾っても違和感はない。

(朝、見知らぬ部屋で男性とふたりきり。それに、もしかしなくてもこの人って……)

 考えるべきことが多すぎで、美月の頭はパンク寸前だった。

「俺のこと、覚えてる? 羽山美月さん」

 にこりと、どこか無邪気な笑みを浮かべて彼は美月を見つめた。

 オシャレなカフェにありそうな、木目のダイニングテーブル。その上にサラダとオムライスがのったプレートが置かれている。オムライスは最近流行りのふわトロ系じゃなくて、美月の大好きな昔ながらの、しっかり焼かれた薄焼き玉子で綺麗に包まれたもの。

 シャワーを借りてしっかりと目を覚ましてきたので、今の美月はゆうべの記憶を取り戻していた。うさ晴らしに立ち寄ったバーで火事に巻き込まれた。もともと悪酔いしていたところに、トラウマの炎を見てパニックになり……。

(そこに彼が現れたのは覚えているけど……)

 続きの記憶はプツリと途切れていた。

「体調はどうだ? 仕事は休みなんだよな? 俺も休みだから病院に行くなら車を出そうか?」
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