エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
「ふふ。私、この昔ながらのやつが大好きなんだ」
「そりゃよかった」

 食べはじめたら、空腹だったことを身体が思い出したようだ。そういえば、昨日の夕食はお酒のつまみを少し口にした程度で食事らしい食事はしていなかった。

 無心でオムライスを口に運ぶ美月を見て、晴馬は目を細める。

「それだけ食べられるなら、もう大丈夫そうだな」

 ホッと安堵したような彼のため息が耳に届く。すごく心配してくれていたようだ。美月は顔をあげて彼を見る。

「あらためて、ゆうべは助けてくれて本当にありがとう」

 かつての天敵なので素直になるのはやや気恥ずかしい。でも、ひと晩泊めてもらったうえに、こうして朝食まで用意してもらったのだ。恩返しは必要だろう。

「なにかお礼するね。もしリクエストがあったら……」

 美月の言葉を遮って、彼は言う。

「元気になったところを見せてもらえれば十分だ。ゆうべ、美月が気を失ったときは……かなり焦ったから」

 真剣な瞳から彼の不安が伝わってくる。

(もしかして、あの事件のことも覚えてる?)

 美月のトラウマの原因となった、あの日の火事。もう二十年以上も前だけど、美月にとっては一生忘れられない出来事だ。あの場所には彼もいた。

(私が火事を怖がる理由を知っているから……だから、こんなにも心配してくれているの?)
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