エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 食後のコーヒーを楽しみつつ、長いこと他愛のない話を続けた。せっかくの休日にひとりきり。失恋と失業のことだけを考えるはめになりそうだった美月としては、彼との時間は楽しく、ありがたかった。

 正午を少し過ぎたところで、美月はようやく腰をあげた。

「ダラダラ居座っちゃって、ごめんね。今度、本当にお礼はするから」
「そこまで言ってくれるなら……じゃあ、飯でも奢ってよ」

 晴馬がそんなふうに答えて、ふたりは連絡先を交換し合った。

 ゆうべは気を失っていたので知らなかったが、この晴馬の暮らす豪華タワーマンションは美月の自宅と同じ豊洲エリアにあって、ふたりの家は徒歩十五分程度で行き来できる距離だった。

「車出してもいいけど、天気もいいから歩くか」

 玄関で靴を履く美月の横で、彼も白い革のスニーカーに足を入れる。

「もしかして、送ってくれるつもり……だったりする?」
「あぁ」

 当然のように彼がうなずくので、美月は慌てて顔の前で右手を振る。

「大丈夫だから。昼間だし、すぐ近くだもの」
「ゆうべのことを考えると心配だから。念のためな」
「で、でも!」

 晴馬はふっと口元を緩めて、美月の頭をポンと軽く叩いた。

「弱っているときくらい、人の好意に素直に甘えてみろよ」

 美月を見る彼の目はすごく優しい。

(弱っているとき……)
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