エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
「あぁ。プライベートの会合……みたいなものがあってね」

 どうにも歯切れが悪いし、渋い表情だ。

(この前、帝都グランデの名前に妙な顔をしていたのもその会合が嫌だったからなのかも)

 なんにせよ晴馬が喜ぶ話題ではなさそうだったので、それ以上の追及はやめておいた。

「美月、仕事はどうするんだ? これから転職活動?」
「うん。狭い業界だし、そううまくはいかないと思うけど……ホテリエの仕事は大好きだから諦めずにがんばってみるつもり。場合によっては、地方も選択肢に入れてみようかな」

 都内のホテルにこだわらず、観光地のリゾートホテルもありかもしれない。心機一転、新しい環境に飛び込むのも悪くない気がしてきた。
 そんなふうに前向きになれたのは、隣にいる彼のおかげでもある。

「晴馬、今日は本当にありがとね。あの人のまぬけな顔が見れて、せいせいしちゃった」

 捨てたつもりの元彼女と、とびきり素敵な男性のツーショット。プライドの高い省吾には、相当こたえたはずだ。

(まぁ、現実は素敵な恋人どころか新しい仕事も見つかっていない悲惨な状況なんだけどね。でも!)

 美月は胸の前でこぶしを握る。

「決めた。さっきの見栄を真実にできるよう、がんばる! 転職も華麗に成功させて、素敵な恋人だって見つけてやるんだから」
「逞しいな」

 クスリと笑った、晴馬の美しい顔がゆっくりと近づいてくる。
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