エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
「お決まりの、そろそろ身を固めたらどうだ?ってやつ」

 晴馬は憂鬱そうに顔をゆがめる。

(あぁ、なるほど。それが理由だったのね)

 彼の家族仲は良好だったはずだから、親族の集まりでなぜ晴馬が渋い顔をすることになったのか。疑問に感じていたのだ。

「二十九歳、そこまで焦るような年齢かなぁ」

 自分たちは同じ年だ。美月も今秋の誕生日を迎えれば二十九歳になる。

(まぁでも、適齢期なのは間違いないか)

 それに彼は、北原建設の御曹司。庶民とは事情も異なるだろう。

「うちの親は放任主義だから問題ないんだけど、祖父がね。北原一族は誰もあの人に逆らえないから」

 晴馬の祖父である北原善次郎(ぜんじろう)は、北原建設が今のような大企業になった立役者なのだそう。よって、今でも一族のトップとして君臨しているらしい。

(おじいさまは晴馬たちとは別に暮らしていたから、私はお会いしたことないのよね)

「なるほど、おじいさまか」

 その世代なら、三十歳までに結婚と妄信していても不思議はない。

「昔ながらの頑固じいさんで、男は結婚してこそ一人前ってうるさくて。俺のことはとくにかわいがってくれていたから、世話を焼きたくて仕方ないらしい」

 数年前に奥さまを亡くした善次郎は、現在はアラブ首長国連邦の都市ドバイで悠々自適のひとり暮らし。そこから親族を通じて、晴馬に結婚の圧力をかけてきたそう。
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