エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
「あくまでも三か月だけの演技だし。喜ぶような子には……逆に頼めない」
「……それもそうか」

 本気で妻になりたい子からすれば三か月でバイバイは傷つくだろう。こういう件は互いにビジネスライクなほうがいいのかもしれない。

(晴馬には、火事のときと今夜で二度も助けてもらっちゃったし、お礼をしたい気持ちはあるけど)

「でも、おじいさまに信じてもらえる演技力が必要ってことだよね? 私、そんなに器用なほうじゃないし自信ないな。そもそもさ……」

 美月は晴馬の顔をのぞく。

「彼女がいないなら、おじいさまの望みどおり縁談でもなんでも受けてみるのはどう? 意外といい出会いがあるかもしれないよ」

 その結果、まだ結婚を考えられないのであれば正直にそう伝えればいい。美月は正攻法を提案してみたけれど、晴馬は険しい顔で首を横に振る。

「そんな理解ある優しい祖父なら、こんなに悩んでいないよ。見合いをしたら最後、強引に話をまとめられるのが目に見えてる。それに……」

 軽く目を伏せ、ややためらいがちに彼は言葉を続ける。

「俺、結婚する気ないんだよ。今は……とかじゃなくてずっと」

(そう、なんだ)

 少し意外ではあった。昔から賑やかな輪の中心にいるタイプだったし、温かな家庭が似合うように思うから。でも、人にはそれぞれ人生プランがあるし美月がどうこう言う問題でもない。
< 46 / 180 >

この作品をシェア

pagetop