エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
「俺はレスキューだからオレンジだ」
「レスキュー?」

 聞いたことはあるものの、普通の消防士さんとどう違うのか美月にはよくわからない。それを察してか、彼が丁寧に解説してくれる。

「消防士といっても役割はひとつじゃないんだ。ざっくり分けると、消火、救急、救助の三つ。一般の人がまずイメージするのは、消防車に乗って火災現場に駆けつける消火活動だろうな」
「うん。むしろ、ほかのふたつはピンとこないかも」

 消防士といえば火災現場で活躍するもの。美月はそうシンプルに考えていた。

「そうだよな。でも、普通の人が一番接する可能性が高いのは救急だと思う。救急車に乗って、病人や怪我人の初期対応をする。救急救命士と呼ばれる仕事だが、彼らも消防の人間なんだよ」
「そっか、救急車は消防署の管轄だもんね」

 救急車に乗っているのは医師ではない、それは聞いたことがあった。

(なるほど。彼らは消防士さんの仲間だったのね)

「そう。で、最後のひとつが俺の所属するレスキュー隊。火災現場にも出動するが、消火活動以上に人命救助に特化した仕事なんだ。火災だけでなく、震災やテロの現場でも活動する」

 数年前にあった大きな震災のときは彼も現地に赴き、救助活動を行ったそうだ。

「そうだったんだ。あんなに大変そうな現場に……」
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