エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
「美月の奢りは次回な。焼肉食べたいから、いい店を探しておいてよ」

 うまく丸めこまれてしまったような気がする。こんなふうに言って、いつまでもお返しをさせてもらえないのではないだろうか。

 晴馬の知り合いの店は、車をおりた場所から五分とかからなかった。

「ここって……」

 洗練された高層ビルを見あげて、美月は目を丸くした。パールトンホテルと書かれた看板は、まぶしいほどに輝いている。

「最上階の鉄板焼きレストラン。父親とシェフが昔から親しくしていて、俺も世話になっているんだ。いつか食事に行きますと約束していたものの……ずっと行けてなかったからさ」
「パールトンホテルの最上階レストラン……」

 美月の口はぽかんと開いたまま塞がらない。

 どんな料理でどんなサービスなのか、すごく気になるけれど気軽にごちそうになれるランクの店ではない。

「いやいや、さすがにその店はっ」

 すっかり腰が引けている。

「もう予約してあるし。当日キャンセルはホテルからしたら、迷惑でしかないだろ。諦めて付き合ってよ」

 それを言われると反論できない。黙り込んだ美月に目を細めて、彼はそっと手を引きエスコートしてくれる。

「――さすが」

 入口からホテル内に入った美月は、思わず感嘆のため息をこぼす。
< 61 / 180 >

この作品をシェア

pagetop