エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 シックでゴージャスな内装のロビーには、ほんのりといい香りが漂う。スタッフはみな姿勢がよく、機敏な動作は見ていて気持ちがいい。どのお客さまも上品な装いをしており、振る舞いも優雅だった。

(一歩足を踏み入れただけで、お姫さまになった気分を味わえる。パールトンホテルが特別な理由がよくわかるわ)

「帝都グランデも素晴らしいけど、ここもいいホテルだよな」
「うん。ここで働けたら、学べることが多いだろうな」

 エレベーターへと歩を進めながら、美月はチラリとコンシェルジュデスクに目をやる。パールトンのコンシェルジュは白いスーツにゴールドのスカーフ。あの制服に身を包む自分を想像するだけで胸が弾む。

「似合うと思うよ」

 ふっと頬を緩めて、晴馬が笑う。美月は上目遣いに軽く彼をにらんだ。

「このタイミングで私をここに連れてくるの、よく考えたらちょっとずるくない?」

 例の件に対する美月の返事がイエスに傾く。それを見こした彼の作戦だと、今さら気がついた。

「北原家の教えなんだ。勝負は勝てる状況に持ち込んでから挑めってね」
「……なるほど。だから北原建設の業績は右肩あがりを続けられるわけか」

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