エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 美月はごく普通の公立小学校に通っていた。横浜エリアは富裕層も多いのでリッチな同級生はもちろんいたけれど、北原家の御曹司レベルなら私立に行くほうが自然だと思ったのだ。

「子どもの頃はそんなこと考えもしなかったけどさ、今思うと北原家のお坊ちゃんとお手伝いさんの娘である私が同じ学校って普通はあまりないよね?」
「あぁ。じいさんの教育方針なんだよ。いい学校は勉強のできる人間が行くべきであって、金にものを言わせちゃダメだって。名門に行きたきゃ勉強しろって、よく言われた」
「へぇ。素敵なおじいさまだね」

 美月はグラスを持ちあげ、透明な泡の弾けるシャンパンをひと口ゴクリとする。上品で華やかな香りが鼻を抜けていく。料理だけでなく、扱うお酒も当然のように一級品だ。

 晴馬の唇が誇らしげに弧を描く。

「まぁな。頑固だけど筋の通った人ではあるかな」

(厄介で面倒な祖父だと口では言ってたけど……)

 晴馬が祖父を尊敬していることは察せられた。

「だから俺、ずっと公立なんだよ。大学も国立に行ったし」
「そうなんだ」
「美月は? いつカナダから帰国したんだ?」
「大学入学のタイミングだよ。大学は関西だったから四年間、向こうで暮らしたよ」

 和食とフレンチを融合させた繊細で美しい前菜、大ぶりの鮑と甘みの広がるホタテ、メインのサーロインステーキは舌の上でとろけるようだった。
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