エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 おいしい料理とお酒のおかげもあってか、久しぶりの再会のわりには会話が途切れることもない。なごやかで楽しい時間が流れていく。

「どの料理も絶品だったね」
「デザートは季節のフルーツと木苺ソースのブランマンジェだって」

 ブランマンジェはフランスの伝統菓子で、ミルクとアーモンドで作るのが基本のレシピ。プリンやババロアとの違いは、卵を使わない点だとシェフが教えてくれた。

「ブランマンジェには酸味の強いソースが合うんですよ」

 彼の言葉どおり、アーモンドと木苺ソースの相性は抜群だった。

 デザートを食べ終えたタイミングで、晴馬の表情が真剣なものに変わる。

「さて、提案した取引の返事を聞かせてもらってもいいか?」

 美月はまっすぐに彼を見返し、うなずく。

 ここに来る前から、もう答えは決めてあった。

(パールトンで働けるかもしれないチャンス。この切符を手放したら、絶対に後悔する)

「返事はイエス。三か月だけ、私はあなたの妻になる」

 晴馬の目が嬉しそうに細められた。

「美月ならそう言ってくれると思ってた」

 大きな手を彼はスッと差し出す。

「よろしく、奥さん」
「こちらこそ」

 交渉成立の握手に美月はしっかりと応じた。

(私に、省吾さんを責める権利はないんだろうな。彼に負けないくらい私も利己的な人間だ)
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