エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
「空気感とか距離感ってなんとなく伝わらないか? ほら、社内恋愛で本人たちは隠してるつもりでも周囲にはバレバレとかさ」
「あぁ、たしかに! ホテルに来るお客さまでも、不倫中のカップルって不思議とわかるのよね」

 女性がいやに艶っぽかったり、男性がかっこつけようとしていたり。何気ないやり取りや視線の交わし方で、見ているほうには伝わってしまうものだ。もちろん、ホテリエとしてはなにも勘づいていない顔を貫くが。

(晴馬の言うとおりだ。夫婦のふりって、思っているより難しいのかも)

 仕事として引き受けた以上はしっかりやり遂げたい。美月は気を引き締め直して、彼を見返す。

「そうだね。よし、晴馬の仕事や生活ぶり、もっと詳しく教えて。妻なら知っていて当然だもんね」
「そうだな。あとは付き合いはじめたきっかけとか、そういう設定もしっかり詰めて……」

 ふたりともすっかりビジネスモードになって、完璧な夫婦を装うための対策を議論しはじめる。

「嘘が多くなるとボロが出るし、偶然再会したところまではありのままでいいと思うんだが、どうだ?」
「いいね。実際、あの再会は結構ロマンティックだったし、恋に落ちてもおかしくないと思うな」

 火事から助けてくれたときの晴馬は本当にアクション映画のヒーローさながらで、かっこよかった。失恋直後の身でも、少しときめいてしまったくらいだから。
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