エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 ペンダントトップの部分はイニシャルのような形をしているのだが、たしかによく見ればアラビア語であることがわかる。
 ホクホク顔の善次郎と呆気に取られている美月。ふたりの顔を交互に見て、晴馬は小さくため息をつく。

「じいさん。距離を詰めるのが早すぎる。あと、ネックレスは初対面の女性に贈るものじゃないぞ。美月が困っているじゃないか」
「孫の嫁と親しくして、なにが問題なんだ? そもそも、わしは女の子の孫が欲しかったのに……次から次へと男ばかりで」

 善次郎は悔しそうに下唇を噛み締める。

 困惑している美月の耳に顔を寄せ、晴馬がささやく。

「北原家は異様なまでの男系なんだ。そのせいで、じいさんは女の孫に執着してる」

(つ、つまり……歓迎はしてもらえてるのかな?)

「男としての責任がどうとか、跡取りがどうとか……もっともらしいことを言って俺に結婚を迫ってたが、結局は〝女の孫が欲しい〟っていう自分の願望なんだろ」

 呆れたように晴馬は肩をすくめる。善次郎はキッと晴馬をにらみつけた。

「それのなにが悪い? いつ迎えが来るともわからない、老いぼれのささやかな夢くらい叶えてくれたっていいだろうが」
「心配しなくても、じいさんは百まで生きるよ。それに、兄貴の結婚で夢は叶っただろう? お義姉さん、いい人だし」
「かわいい孫娘は何人いてもいいんじゃ。なぁ、美月さん」

 カラカラと明るく、善次郎は笑った。
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