エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
「――はい! お土産もありがとうございます。ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願いいたします」

 美月は丁寧に頭をさげる。善次郎は厳しそうな見た目とは違って、懐が深く温かい人だった。晴馬がふぅと細く息を吐く。

「まぁ、これで縁談の斡旋は必要ないとわかってくれただろう」
「そうじゃな。よさそうな女性との話がいくつもきていたが……」

 善次郎はふたりの顔を交互に眺めて、嬉しそうに目を細めた。

「美月さんが一番、晴馬に似合っとる」

(よかった、とりあえず第一関門突破かな)

 美月はホッと胸を撫でおろす。
 まずは信じてもらえたようだ。あとは善次郎が日本にいる三か月、ボロを出さないように気をつけていれば大丈夫。なのだが……。

(うぅ、想像以上に胸が痛むわ)

 善次郎に温かく歓迎してもらえればもらえるほど、良心の呵責に苦しむことになりそうだ。

(でも晴馬と約束したし。ごめんなさい、おじいさま!)

 美月は心のなかで善次郎に土下座した。

 つばめの巣スープ、点心の盛り合わせ、フカヒレの姿煮。王道の中華料理はどれもおいしいし、善次郎もニコニコと楽しそうにしてくれている。

四川(しせん)料理の店でなくてよかったな、晴馬」
「え? 晴馬、辛いものダメなの?」

 善次郎が晴馬にかけた言葉に、美月はついなにも考えずに反応してしまった。

(あ、しまった!)
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