エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 考えてみれば当たり前だ。財界の大物の心中など、美月におしはかれるはずもない。

「しばらくは横浜の屋敷に滞在するんだろう? 送っていくよ」

 食事を終えると、晴馬は車の鍵を握りながらそう言った。

「あぁ。そうしてもらえるとありがたい」

 善次郎も腰をあげた。

「よかったら、今度は我が家に遊びに来てください。結婚式のことなど、相談したいので」

 この台詞は打ち合わせどおりだ。彼を家に招いて、そのときに婚姻届にサインするところを見てもらう。そういう計画だったから。

「そりゃあ楽しみだ」
「ふたりで夕食を作って、おもてなしするよ」

 自宅でのディナーパーティーは来週の土曜日。そう約束をした。

 数日後。善次郎とのディナーを翌日に控えた金曜日の朝。今日と明日、晴馬はどちらも完全フリーの週休だ。美月のほうは、いよいよパールトンホテルの面接におもむく。

 グレーのスーツに身を包んだ美月は、やや緊張した面持ちで晴馬に向き直る。

「それじゃ、行ってきます」
「あぁ。美月なら大丈夫だと思うから、いつもどおり平常心でな」
「うん、ありがとう」

 彼の笑顔に背中を押されて、家を出る。向かうは六本木のパールトンホテル。

 澄んだ青空を仰いで、美月は表情を引き締めた。

(さぁ、正念場だ!)
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