エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 無邪気に、彼はウインクをしてみせる。

「え、いや、それは……あんまり自信ないかも」

 伝えたかった思いは全部伝えた。だから悔いはないけれど、パールトンを受けにくるライバルはきっと手強いだろう。

「信じることも案外大事だと思うぞ。受かったつもりになっておけ」

 彼らしい言葉を聞いて、自然と笑みがこぼれた。

「それに、先日の爺さんの態度……どうも引っかかるというか、油断ならない感じだったから。明日のディナーに向けて、しっかり夫婦の予行演習をしておこう」
「うん、そうだね」

 明日は善次郎がふたりの暮らすマンションにやってくる。自宅だと思わぬボロが出る可能性もあるし、気を引き締めて臨まなくては。

(こうして面接を受けさせてもらったんだから、私も任務を遂行しないと!)

 ラウンジの会計を済ませて、晴馬が戻ってきた。

「でもさ、偽装を疑われているわけじゃなくて……そもそも私がダメだったという可能性はない? ほら、釣り合いとかそういう面で」

 善次郎は苛烈なビジネスの世界を生き抜いてきた人物だ。人を見る目はきっと厳しいだろう。十分にありえる話だと思うのだが、晴馬はきっぱりと首を横に振った。

「それはない。祖父が美月を気に入ったのは間違いないよ」
「それなら嬉しいけど」
「というわけで、今日はいつもより距離を近づけさせてもらう」
< 82 / 180 >

この作品をシェア

pagetop