エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 言って、晴馬は美月の手を握った。指先をしっかりと絡める、恋人繋ぎだ。

「嫌か?」

 いやに熱っぽい視線が、背の高い彼から落ちてくる。いつもの、幼なじみの彼じゃない。

「ううん。……このくらいなら平気」

 そう答えたものの、本当はちっとも大丈夫じゃなかった。顔は熱いし、心臓はバクバクとうるさい。

 こんなときにかぎって、晴馬の車を停めてある地下駐車場に向かうエレベーターはふたりきり。十分な広さがあるのに、美月の肩は彼の腕の辺りに触れていてそこが燃えるように熱く感じる。自分の心臓の音が彼にも聞こえてしまう気がした。
 美月はそっと晴馬の横顔を盗み見る。涼しい顔をしているのが少し憎たらしい。
 これは夫婦の練習で、ドキドキする場面じゃない。わかっているのに――。

(晴馬が急に、男の人になるから……)

「わぁ、横浜だ~」

 子どもの頃によく遊びに来ていた海辺の公園。美月は手すりから身を乗り出すようにして遠くを眺める。当時もよく、こうしていたものだ。

 日差しを浴びてキラキラと輝く海面、そこを進む白い船。斜め向こうには赤レンガ倉庫や、特徴的な外観で有名なホテルも見える。

「晴馬と一緒にこの場所にいると、小学生に戻った気分になるね」
「美月とのデートなら、やっぱり横浜かなと思ってさ」

 デートという単語にドキッとして、美月は妙に焦った声で反論する。
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