エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 晴馬は前髪をクシャリと乱して、申し訳なさそうに笑う。

「大事な面接の前にあれこれ話すと気が散るかなと思って黙ってたんだけど……デートの誘いを事前に伝えておけば、着替えを持ってくるとかできたのに。ごめん」

 面接がうまくいくように。彼のその思いがすごく嬉しくて、美月の胸はじんわりと温かくなった。

「男ばっかりの職場で過ごしてるから、こういうところ全然気がきかなくてダメだな」

「ううん! 遊園地のチケットも、服や靴の心配してくれたことも、すごく嬉しいよ。こんなふうに女性扱いされる機会、あんまりないからちょっと照れるけど」

 子どもの頃はふたりとも意地っ張りで喧嘩ばかりしていたけど、大人になった晴馬はまっすぐな優しさを向けてくれるから……美月も自然と素直になれた。

「よかった。じゃあ服と靴をプレゼントさせて」
「えぇ? それはダメ! 自分で買うから」

 デートの前に洋服を一式プレゼントなんて、女性扱いを通りこしてまるでお姫さまだ。自分のキャラとは違いすぎて、全力で拒否してしまう。

 すると、晴馬がふいに顔を近づけてきた。爽やかで、でもしっかりと男らしい晴馬の匂い、キラキラした瞳と形のいい唇。彼のすべてが今はやけに艶っぽく感じられて、心臓が早鐘を打ちはじめる。

「は、るま?」

 喉が渇いて、呼びかける声はかすれていた。

 彼の顔に浮かぶ強気な笑みが、美月を射貫く。
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