エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
「美月は俺の奥さんなんだから。『ありがとう』って言っておけばいい」

(え、え、えぇ~)

 プシューと音を立てて、頭がパンクした気分だ。いっぱいいっぱいで、もう反論の言葉は思いつけなかった。

「まずは先に靴を決めよう」

 シルバーのバレエシューズ、甲のところがV字にカットされたフラットパンプス、ビジュ―のついたかわいいサンダルなどなど。歩きやすそうな靴たちが、試着用の椅子に座った美月の前に並べられる。

「どう? 好みのものはある?」
「どれも素敵で迷うなぁ」
「じゃ、俺が選んでもいいか」

 言って、彼は美月の前にひざまずく。たくさん並んだ靴のなかから、彼の手は迷わず一足を選び取る。

「絶対、これが一番似合うと思う」

 大人っぽいグレージュカラーのフラットシューズ。オープントゥが今の季節にぴったりだ。

(あ、私も一番いいなと思ったやつ)

 晴馬の手がそっと優しく美月の足を取り、その靴を履かせてくれる。

「やっぱり」

 満足げに彼はほほ笑む。

「痛むところとかないか? 問題なければ、履いていけるように頼んでくる」
「う、うん」

 彼の手は離れたのに、触れられていた右足がまだ熱い。晴馬といると、心臓が静まる瞬間がない。いつもより体温が上昇して、鼓動が速くなる。

(どうして? いやいや、違う。これは、そういうのじゃないから)
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