エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
(晴馬の隣は、どうしてこんなに安心できるんだろう)

「さっきの面接、どんなことを聞かれたんだ?」
「うん。帝都グランデでの経歴とか、あとカナダでのことも少し聞かれたかな。モントリオール在住だったからフランス語もある程度は話せると言ったら、反応よかった」

 フランス語はカナダの第二公用語だ。美月が暮らしていたケベック州モントリオールでは英語よりフランス語を使う人のほうが多いくらいだった。

「パールトンの創業はパリだもんな。フランス語ができるのは大きな武器だろう」
「うん。でも、ケベックのフランス語って訛りが強いから。フランス人には馬鹿にされがちなんだけどね」
「言語は、意志疎通ができればそれで十分だと思うけどなぁ」

 晴馬らしい感想に笑ってしまう。

「あとは定番の志望動機を聞かれたよ」
「それ、俺も興味あるな。なんでホテリエを目指すようになったんだ?」
「それは――」

 面接で話した内容を彼にも伝える。

「お母さんがまだ生きていた頃ね、私の誕生日祝いにふたりでホテルに泊まったんだ。うちはそんなに裕福ではなかったから、パールトンや帝都グランデほどのハイクラスではなかったけど」
「うん」

 今でも鮮やかに思い出せる、あの特別な空間。

 幼い美月の目にはエントランスもロビーもすごくきらびやかで、お伽話に出てくる舞踏会に来たような気分になれた。
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