エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 そして、案内された部屋を開けた瞬間の感動は一生忘れられない。

「部屋にたくさんの風船が飾られていて、バースデーカードと小さな丸いケーキが用意されていたの。あんなにワクワクしたこと、なかったなぁ」

 美月の母が予約時に『娘の誕生日だから』と何気なく話したら、ホテル側がサプライズを企画してくれたとのことだった。

「だから、私にとってホテリエはシンデレラの魔法使いみたいな存在なんだ。こんなに素敵な仕事、ほかにはないでしょう?」

 とびきりの笑顔を、美月は彼に向ける。

「魔法使いか。なるほどね」
「まぁ、綺麗なばかりではなかったけどね」

 かつての上司の顔を思い浮かべて美月がシュンとすると、晴馬は励ますように背中をポンと叩いてくれる。

「それはどんな仕事も同じだな。でも、だからこそ好きな仕事がしたい。美月もそうだろう?」
「うん。……パールトンの面接、合格していますように」

 オバケ屋敷にジェットコースター、ふたり揃って全力で遊んでいるうちにすっかり日が傾きはじめていた。園内のかわいい仕掛け時計が示す時刻は夕方六時。

 美月の視線の先には、横浜のランドマークでもある大きな観覧車がある。

「観覧車か。小さい頃、お母さんと一緒に乗ったなぁ」
「……付き合ってたやつとは乗らなかったの? デートの定番だろ」

 晴馬にそんなツッコミをされるとは思っておらず、少し焦ってしまった。
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